和歌山県上富田町にある彦五郎公園(ひこごろうこうえん)は、上富田町民にとって憩いの場所となっていますが、一方では、水害から村を守った彦五郎の悲しい伝説を持つ公園。さらに、南紀熊野ジオパークにも指定されている公園。色々な顔を持つ公園です。さらに、町民によるボランティアで四季とりどりの花が咲いている公園でもあります。そんな彦五郎公園を紹介します

彦五郎伝説
富田川は、その昔、暴れ川として有名で、洪水で地域の人々を困らせていました。そこで、洪水をなくすために、住民がどんな雨にも負けない、大きな堤防を作ることを考えました。そこで生まれたのが彦五郎伝説です。
昔はない、富田川(とんだがわ)はよう大水出て、そのたんびに田んぼや畑が流されてん。ほいでに村の人は、大雨にも崩れんしっかりした堤防ほしなあて思やってん。ある年もまた大水出てない、人も馬も流されて死ぬし、田んぼも畑も埋まってしまうような目におうたんで、もう、今度こそしっかりした堤防ほしいちゅうんで、氏神(うじがみ)さんにまいってお願いしてん。ほいたら夢枕(ゆめまくら)に神さんが現れて「堤防に人柱を立てよ。そいたら堤防は安全や」て言うてんとう。人柱ちゅうのは、神さんの心を慰(なぐさ)むるちゅうて、生けったある人を土の中に埋めることやぜ。
https://wave.pref.wakayama.lg.jp/bunka-archive/minwa/36.html
さあ、いったいだいを人柱にしようかて、村の人は何べんも寄り合いしてんけど、なかなか決まらなんでん。ほいたら、その場にいた彦五郎はんがさって立ち上がって「こんがに相談しても人がないんやったら、わしに考えあるんやけど、言うてもええか」て言うてんとう。村の人は、日ごろ無口な彦五郎が、急に大きな声でしゃべり出いたんでびっくりしてそっち見たら、不精(ぶしょう)ひげいっぱい生やいた顔を、赤茶けた手拭(てぬぐい)の端で拭きもて「わしが思うに、あがから人柱になりたいていう人らおらんやろ。ほいで、この場で、着物のつぎが横継ぎにあたったある人あったら、その人に人柱になってもらおやないか」て言うんや。
村の人ら、なっとうしょうかてよわりこんだあったもんやさか、そいはええ考えやちゅうて、みんなお互いの着物のつぎ見せおうてんとう。ほいたら、なんとまあ、言い出いた彦五郎はんの着物に大きな横継ぎのつぎが当たったあってんとう。ほいで、とうとう彦五郎はんが人柱になってん。
そいからこっち、富田川の堤防はどんがにえらい雨降っても切れんようになってんとう。その堤防は今も彦五郎土手ちゅうんや。ほいから彦さんと五郎さんのおとついやったていう人もあら。
上富田町民ならみんなが知っている伝説です。真意のほどはわかりませんが、それだけ洪水に悩まされたということでしょうか?丁度、彦五郎堤防の付近では、土地が川底より低くなっています。遊水地であった可能性が高いと思います。堤防には、「彦五郎人柱の碑」「溺死者忠魂碑」の二つの碑が立っています。


ジオパーク彦五郎
彦五郎堤防は富田川の右岸に位置し、約1kmにおよぶ長大な堤防である。氾濫を繰り返した富田川の治水のために人柱になったという彦五郎の伝説がある堤防です。堤防上には4基の石塔が建ち、1基は人柱彦五郎顕彰碑、1基は明治洪水招魂碑があります。オパーク とは、「ジオ(地球・大地)」と「パーク(公園)」を掛け合わせた言葉で、「大地の公園」を意味します。 地球(ジオ)を学び、丸ごと楽しむことができる場所をいいます。彦五郎公園は、暴れ川と戦った証です。

四季の花が見られる彦五郎公園
春の桜、6月には紫陽花、秋の彼岸花はもとより地元の方々がボランティアで、四季の花を咲かせています。いつ訪れても癒やしを与えてくれる場所です。
坂本冬美さんと彦五郎公園
演歌歌手「坂本冬美」さんは地域で最も有名な方です。地元の朝来(あっそ)小学校、そして上富田中学校、熊野高校と、地元のエリートコースで学生時代を過ごしました。上富田中学校・熊野高校ではソフトボール部に所属し活躍したのは有名な話しです。その冬美さんが遊んだのも彦五郎公園です。その彦五郎公園には、冬美さん自筆の「夢」という文字の石碑と、上富田町のイメージソング「鳳凰の街」「ただいま故郷」を刻んだ石碑があり、ボタンを押すと聴くことも出来ます。
坂本冬美さんが中学時代に書いた作文が、今でも残っており、今でも学習に使われています。内容は「私の将来の夢は、歌手になり、紅白歌合戦に出ること」
夢を実現させた冬美さんに学ぶ学習が今でも続いています。
当寺の同級生に聞くと、中学校時代から、ローカで坂本さんのミニコンサートがあったとのことです。




上富田町産業振興・交流施設『彦五郎』
彦五郎公園入り口にあるのが、上富田町産業振興・交流施設「彦五郎」です。町がカフェ「エフノカッテ」を「上富田町産業振興・交流施設『彦五郎』」としてリニューアルし、社会福祉法人ふたば福祉会(田辺市文里1丁目)が施設の管理と運営をしている。店内には、陶器やバッグ、小物入れ、子ども服、アクセサリー、ドライフラワー、ハーバリウム、リースなどがいくつも並ぶ。いずれも手作り品。出品する作家は12人で、ふたば福祉会が2016年から毎年4月と12月に開いてきたイベント「ナカマルマルシェ」の出店者。ふたば福祉会が声を掛け、集まった。これとは別に、福祉会が運営する「あすか作業所」と「たなかの杜」のクッキー、パン工房「ぱんだぱんだ」のパン、ふたば作業所の手織りかばん、みなべ町にある「なかよし作業所」のトマトジュースなども販売している。
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